保証人は、主債務者の代表者が、家族を欺いて保証人の実印を持ち出させたうえ、勝手に押印したものとある旨を主張しましたが、その主張が認められなかったものです。保証後の行動が決めてになったと思われます。
以下、控訴人(原審の原告・代位弁済した信用保証協会)をX、被控訴人(原審の被告、連帯保証人)をY、主債務者をA、Yの養母をB、主債務者Aの代表者をCとして、引用いたします。
「一 ≪証拠≫を総合すると、請求の原因1(XとAとの間の信用保証委託契約の成立)、同3(Aと株式会社大光相互銀行新発田支店((以下「大光相互」という。))との金銭消費貸借契約とその変更契約の成立)、同4及び同5(Xから右銀行に対する代位弁済)の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
二 そこで、Yが本件連帯保証契約を締結したか否かの点について判断する。
本件において連帯保証契約の成立を直接に証すべき甲第一号証の一(信用保証委託契約書)中Yの住所、氏名、の各記載及び押印がYの養母であるBによつてなされたものであることは、原審証人Bの証言によつて明らかであり、Xも争わないところである。
しかしながら、右甲第一号証の一、第一四号証の一、二(保証条件変更申込書)、第三号証の一、二(金銭消費貸借契約証書及び念書)中各連帯保証人欄のY名下の印影がいずれもYの実印によつて顕出されたものであることは、Yの認めるところであるうえ、≪証拠≫を総合すると、Aを経営するCはYの養父である<略>の実弟で、Yと叔父、甥の関係にあり、右耕策は従前からCに依頼され、数回にわたつてAが大光相互から融資を受けるについて連帯保証人となつていたが、昭和五五年七月一二日死亡し、その当時大光相互としてXの保証付きでAに対して金二〇〇万円と金一〇〇万円の二口の貸金債権を有していたので連帯保証人である<略>の死亡に伴い、これを一本にまとめるとともに保証人の変更手続をとることにし、同年九月三日Cから甲第一号証の一を初めとする関係書類の提出を受けてその手続を了したのが本件貸付金であること、その後右貸付金につきAと大光相互の間で昭和五六年三月三一日及び同年七月三一日の二回にわたり弁済方法等変更の合意がなされ、これに伴つてCから、右期日ころそれぞれ大光相互を経由してXに対し保証条件変更申込書(甲第一四号証の一、二)が、また右七月三一日ころ大光相互に対し、金銭消費貸借契約証書及び念書(甲第三号証の一、二)が提出されたが、右各申込書、契約証書及び念書の連帯保証人欄のY名下にはいずれもYの実印が押捺されていること、前記昭和五五年九月三日の貸付金一本化等の際及び同五六年七月三一日の弁済方法変更の際にそれぞれY名義の印鑑証明書(甲第一号証の一、第三号証の三)が添付提出されていること、前記金銭消費貸借契約証書及び念書(甲第三号証の一、二)の連帯保証人欄のYの住所氏名はYの妻である<略>によつて記載されたものであるが、B及び<略>はいずれも家族としてYと同居していること、大光相互はその後Aが本件債務の履行を遅滞したところから、昭和五六年九月一〇日ころYに対し保証人として主債務者であるAが債務を履行するよう督促方を依頼するとともに、保証責任追求の事態もあり得ることを警告した書面を送付し、次いで同五七年二月九日及び同年五月一七日配達の各内容証明郵便により連帯保証人として右債務を弁済するよう催告し、一方XはYに対し、昭和五七年七月二三日ころ、前記認定のとおり本件債務を代位弁済したことを通知するとともに、信用保証委託契約に基づく保証債務の履行を求め、更に昭和五八年八月ころと一〇月ころの二回にわたりX担当職員<略>がY宅を訪れ、B及び<略>と会つて事情を説明したが、その間Y、B及び<略>から大光相互及びXに対し本件金三〇〇万円の債務につき連帯保証をしていない旨の申し出は一切なかつたこと、その後本件連帯保証債務につきXの申立により支払命令が発せられ、これに対し、昭和五八年一二月三日Yから異議の申立てがなされ(本件記録上明らかである。)たものの、昭和五九年一月一四日、前記<略>がX方事務所まで出向いてきたYと面接した際、保証債務の履行についての話し合いはされたが、Yから本件連帯保証契約の成立を否定するような発言は一切なかつたこと、本件貸付金とは別個に大光相互はAに対し、昭和五五年九月と一〇月に二回にわたりいずれもYの連帯保証の約のもとに各金一〇〇万円を貸付けており、右第一回目の金一〇〇万円はその後弁済されたが、第二回目の金一〇〇万円については弁済されず、同貸付金については本件と同様信用保証委託契約によりXが保証していたためXにおいて昭和五七年四月二三日大光相互へ代位弁済し、右求償債権につきYに対し、昭和五七年五月一四日、新発田簡易裁判所に申立てて支払命令の発付を受けたが、同支払命令はそのころ異議の申立もなく確定したことが、それぞれ認められる。
以上各認定事実に、原審証人Bがその証言において、<略>が信用保証委託契約書(甲第一号証の一)にYの押印を貰いにきた際、Yの承諾は既に得ている旨述べていたと供述していることなどをも総合考慮するならば、前記のとおり信用保証委託契約書中のYの記名押印はBにおいてなしたものではあるが少くとも右委託契約書作成のころYは本件連帯保証についてこれを承諾していたものと認めざるを得ない。原審証人Bの証言及び原審におけるY本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠と対比して措信することができず、他に右認定を覆す証拠はない。
三 そうだとするならば、YはXに対し、前記求償金二七四万四三六四円及びこれに対する代位弁済の翌日である昭和五七年七月二四日から支払ずみまで約定の年一四・六パーセントの割合による損害金の支払義務があるものというべきである。」