被控訴人は、平成九年五月、訴外会社に対して一〇〇万円の追加融資をするに当たり、大企業に勤務する者の保証が得られれば応じる意向を示している。右は、通常であれば、被控訴人においても、給与生活者は、住宅ローンを除いては、自ら一〇〇〇万円もの巨額の債務を負担するような経済活動をしないものであること(公知の事実と言って良い。)を十分に知った上で、現実に返済できる能力と一〇〇万円という融資額とを考慮した上で、収入の安定した者を保証人にすべきことを求める趣旨に出たものと推認されるところである。それにもかかわらず、前記認定のとおり、被控訴人は、控訴人に対し、本件根保証契約の締結の際、訴外会社が既に数百万円の債務を被控訴人に負っていること、控訴人がその後一〇年にわたり、最大一〇〇〇万円もの巨額について、訴外会社の被控訴人に対する債務を根保証することを内容とするものであり、右契約時に融資する一〇〇万円についてのみ保証債務を負うにとどまらないことを全く説明しておらず、根保証契約書の写しすら控訴人に交付していない。右事実は、被控訴人において、訴外会社に対する新たな融資を契機として、中川の営む事業上の融資について、控訴人の共同経営者に等しい債務を負わせようとの詐欺的意図すら窺うことができると言うべきである。右のような事情の下においては、錯誤についての控訴人の重大な過失についての主張(被控訴人は、当裁判所の錯誤の主張についての求釈明に対し、格別の主張はないという。)を論じるまでもないと解すべきである。