民法改正による変更

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Q 民法改正により保証について規制が厳しくなると聞きましたが、具体的にどう厳しくなるのか、ポイントを教えてください。

A 民法の大幅な改正案が国会に提出されていますが(平成28年5月現在)、当然、保証に関する条文も多数改正されます。その中での目玉は、①個人保証の制限、②情報提供義務、③根保証の規制強化です。

Q 民法改正により、個人保証について、どのような制限が加わるのでしょうか。

A 簡単にいうと、事業のための借入について、一定の場合、公正証書の作成が求められますが、経営者保証は例外となっています。
<個人保証の制限の対象>
・事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約
・主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約
<規制方法>
保証人となろうとする者が、一定の事項(注)を公証人に口授し、公正証書を作成なければならない。
(注)主たる債務の債権者及び債務者、元本、利息、違約金、損害賠償その他従たる債務の全て、保証人になろうとする者の履行意思
<例外>
・主たる債務者が法人その他の団体である場合のその取締役等(=経営者)
・主たる債務者が法人その他の団体である場合の過半数の議決権を有する株主等(=オーナー)
・主たる債務者が個人事業主である場合の、共同事業者等

Q 民法改正により、保証について、債権者に情報提供義務が課されるようになると聞きましたが、情報提供義務とはどのような義務でしょうか。

A 民法改正案には、
保証契約締結時の情報提供義務
保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
が盛り込まれています。

<保証契約締結時の情報提供義務>

1 趣旨
  保証人となろうとする者が、主債務者から「絶対に迷惑をかけない」などといわれ、安易に保証人となったところ、主債務者が履行できなくなり、保証人の予期に反して保証債務の履行をせざるをえなくなることは良くありますが、このような事態を未然に防ぐことを目的とする立法です。

2 要件
㋐主債務が事業のために負担する債務であること
-貸金等債務に限られません。したがって、例えば、事業のために貸事務所を借りるときの保証も含まれます。
㋑主債務者が㋐の債務について保証を委託する場合であること
㋒㋑の委託を受ける者が法人でないこと

3 主債務者が提供すべき情報
主債務者が保証人に対して、保証契約締結時に以下の情報を提供する必要があります。
Ⓐ財産及び収支の状況
Ⓑ主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
Ⓒ主たる債務の担保として他に提供し、または提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

4 効果
主たる債務者が情報提供義務を怠った場合、簡単にいうと、保証人は保証契約を取消すことができます。その取消の要件は以下のとおりです。

①主債務者が、「3 主債務者が提供すべき情報」の説明をせず、または事実と異なる説明をしたこと
②そのために委託を受けた者(保証人)が、「3 主債務者が提供すべき情報」に掲げる情報について誤認をしたこと
③委託を受けた者(保証人)が、それによって保証契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたこと(誤認と意思表示との因果関係)
④主債務者が「3 主債務者が提供すべき情報」の説明をせず、または事実と異なる説明をしたことを債権者が知り、または知ることができたこと

実務的には、取消をしようとする保証人が、④をどのように立証するのかが課題になると思われます。

保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務

1 趣旨
保証人としては主たる債務者の履行状況について関心がありますが、現行法では、保証人が債権者に主たる債務者の履行状況について問い合わせをした場合、その回答義務があるのか不明確でした。そこで、守秘義務を理由に、回答されないことも多くありました。改正法では、保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する債権者の情報提供義務を明記することにより、この問題の解決を立法的にはかるものです。

2 対象
保証全般です。個人、法人は問いません。

3 義務の内容
債権者は、委託を受けた保証人から請求があったときには、保証人に対し、遅滞なく、①不履行の有無、②債務の残額、③債務のうち履行期限が到来しているものの額、について情報を提供しなければなりません。

4 効果
保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務の違反の効果は、民法改正案では規定されていません。したがって、債務不履行一般の規定に従い、損害賠償および保証契約の解除が考えられます。しかし、損害賠償について因果関係のある損害の範囲について、争点になると思われます。

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

1 趣旨
分割返済の場合、通常、弁済を怠ると債務者は期限の利益(弁済期日まで支払わなくて良いという利益)を喪失し、全額を速やかに弁済しなければならなくなることが契約で規定されています。主たる債務者が弁済を怠りこの期限の利益を喪失した場合に、保証人が知らないうちに、保証債務が遅延損害金で膨張することを防ぐのが、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務の目的です。

2 通知義務の要件
①主たる債務者が期限の利益を喪失したこと
②保証人が法人でないこと

3 義務の内容
債権者は、主たる債務者が期限の利益を喪失したことを知った時から2ヶ月以内に、保証人に対し、その旨を通知しなければなりません。

4 効果
債権者が保証人に対して、上記通知をしなかった場合は、その後に債権者が実際にその旨の通知をした時までに生じた遅延損害金について、保証人に対し保証債務の履行を請求することができません。
ただし、期限の利益を喪失しなかったとしても生じた遅延損害金については、債権者は、保証人に対し保証債務の履行を請求することができます。

Q 民法改正により個人の根保証の規制が強化されると聞きましたが、何が変わるのでしょうか。

A 改正前では、貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)についてのみ、根保証の場合は、極度額を定めなければ効力を要しないとされていました。しかし、民法改正案ではこれを拡張し、すべての個人根保証について、極度額を定めなければ効力を有しないこととなります。
この改正により、従前、極度額の定めが不要であった、不動産賃貸借に係わる賃借人の債務の保証や、身元保証契約についても極度額の定めが必要になります。

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