従前、子会社が銀行から融資を受ける際に、親会社から保証書に代えて「経営指導念書」が交付されることが良くありました。しかし、バブル崩壊後、兵銀ファクター事件(東京地判平成11年1月22日)や、山一情報システム事件において、その効果が否定されました。

「本件念書には、「貴行にご迷惑をおかけしない様充分配慮致します」との記載がされているものの、「ご迷惑をおかけしない」、「配慮」といった文言は漠然とした、多義的なものであり、右記載のみをもって、山一證券が被告に対し貸付金について保証することを約したとか、その回収不能による損害を補填することを約したということはできない。さらに、「当社としても常に経営に対して関心を払い、指導・監督・育成を行う所存であり」との記載がされているものの、指導監督等の作為義務の内容を具体的に特定する記載は一切されておらず、右記載のみをもって、山一證券が山一情報システムを指導・監督・育成する作為義務を負担したということはできない。
このように、本件念書には、明確な保証文言や債務の支払文言等は一切用いられずに、その内容において不明確な用語や漠然とした、多義的な用語が用いられており、本件念書の記載のみからは、山一證券において被告に対し被告主張に係る法的な責任を負担することを約したものとは、直ちには判断できないというべきである。」(東京地判H12.12.20)